Netflixで幽遊白書の実写版が2023年12月14日に配信されました。私が小学生の頃に漫画の連載が終わり29年ほど経過しての実写化ということもあり、興奮を抑えられず一気見してしまいました。といっても、実写版わずか5話なんですよね。とても簡単に一気に見られました。うーん非常に物足りない。私のように楽しみにしていた昔からの読者からすると、100%ポジティブに受け止めるのは難しい内容だったというのが正直な意見だと思います。
私が実写版を観て、「受け入れるのが難しいと感じた2点」と、「そもそもの漫画・幽遊白書の面白さ3点」を私なりにまとめてみました。
詳細なネタバレはございません。ただし予告編や事前情報程度の内容は含みます。あくまで感想が中心ですので、漫画原作を読んだことのある方、読んだことない方、実写版をまだ観てない方も安心してご覧ください。
Netflix「幽遊白書」実写版を観て、受け入れがたいと感じた2つの点
冒頭でも説明しましたが、この実写版にとって一番根深い問題点は制作費によって5話という制限の中で作品をまとめ上げることになってしまったということでしょう。俳優の皆様はとても頑張っていらっしゃいましたし、バトルシーンのこだわりは随所に感じられました。
それを踏まえて、私が特に受け入れがたいと感じたポイントを以下の2点にまとめました。
1. 幽助のバトル経験の少なさで、戸愚呂弟との戦いを迎えることになる異常さ
漫画原作をご存知の方であれば、誰しもが知っている「戸愚呂弟」、ドラゴンボールでいうと「フリーザ」のような立ち位置にいる存在だと思います。
漫画原作では、圧倒的な力を誇る戸愚呂弟との暗黒武術会での戦いの前に、たくさんの魅力的な敵キャラとのバトルを通して主人公である浦飯幽助は成長していくことになります。
しかし実写版ではあまりにも幽助の戦いの場数が少ないのです。これは正直かなりの違和感を覚えました。5話という制約があるのであれば、戸愚呂弟との戦いではなく、今回の実写版のラストには「飛影」との戦いや「朱雀」との戦いを持ってきたほうが、原作ファンの期待に応えることができるストーリー構成になったのではと感じてしまいました。
2. 幻海と幽助の関係があまりにも薄っぺらい
幽助の師匠である「幻海」と幽助の関係性は、漫画で読んでも二人のあっさりした性格から一見クールな関係性に見えるのですが、それでも圧倒的に強い師弟関係が結ばれていることに一定の納得感はありました。過酷な修行を一緒に積み重ねてきたというのが、読者でも理解できるようになっています。幻海と戸愚呂弟との因縁、幻海が迎える結末、幽助と戸愚呂弟との戦いという一連のストーリーに感情移入できるように漫画原作では作りこまれています。
しかし実写版での幽助と幻海の修行、絆はあまりにも薄っぺらいのです。この設定では戸愚呂弟との戦いを観ている途中で原作ファンの方に限らずとも興醒めしてしまう可能性は高いと思います。とはいえバトルシーン自体はかなりのクオリティに仕上げられていますので、是非ご覧ください。
そもそもの漫画「幽遊白書」の面白さ2選
「幽遊白書」は間違いなくジャンプ黄金時代を代表する作品の一つだと思います。
当時、小学生だった私はドラゴンボールやダイの大冒険などのバトル漫画とは一線を画す印象を幽遊白書に持っていたのを覚えています。幽遊白書のユニークな面白さこそが、幽遊白書の最も大切なもので、実写版にするに至っても大切にしなければいけなかったものなのだと信じています。
今回の実写化は単なるバトル作品を描いているに等しいので大変残念です。私が幼心に思っていた幽遊白書のユニークな面白さは以下の3つです。
1. 正義とは何か? 自分たちが信じる正義は本当に正しいのか?という視点
最近のジャンプの人気作である「呪術廻戦」の人気キャラクターの一人に「夏油」がいます。彼の思想、彼が選んだ道は悪に起因するものだったのでしょうか。人間がもともと持つ欲深さ、妬み、憎悪に対峙したときに、強すぎる正義感が暴走し辿り着いた結果だったように思えます。これと同じような末路を選んだキャラクターが「幽遊白書」にも登場する「仙水」です。
戸愚呂弟よりも後に登場するキャラクターなので、もちろん今回の実写版には登場しません。これは事前にわかっていたことなので、特に苦情でも不満でもありません。しかしながら仙水が教えてくれた「正義とは何なのか?自分たちが信じる正義は本当に正しいのか?」という視点は、子供の頃の私には強烈に印象に残っていますし、これこそが幽遊白書のユニークな面白さだったと思います。
戸愚呂弟が人間から妖怪に転生するに至った背景も感慨深いのは間違いないのですが、正義を外れた背景としては仙水のほうが強烈でした。
2. 単純なパワーバトルだけではなく、頭脳戦も目を離せない
これも戸愚呂弟との戦い以降で特に目立つことになるので、今回の制約内では描くのが難しいということは重々承知しています。しかしながら、こちらも幽遊白書を唯一無二の存在に至らしめていると思っているポイントです。
主に頭脳戦を繰り広げるのは「蔵馬」です。多くのバトル漫画では単純にパワーvsパワーの構図で描かれることになりますが、原作後半の蔵馬はいくつか頭脳戦を繰り広げることになります。言葉遊びやテレビゲームのバトルが繰り広げられることになるのですが、これがユニークかつシンプルなルールで子供にもわかりやすく楽しめます。単純なパワーバトルではない戦いを描いていた作品として思い出されるのは、ちょうど連載時期が同じだった「ジョジョの奇妙な冒険 第三部」です。この作品の主人公である空条承太郎は最強のパワー系のスタンド能力を持っていながら、一部の敵とはギャンブルやゲームといった頭脳戦を繰り広げています。こういった変化球のバトルが時々描かれることで、物語に緩急が生まれ、厚みが増して作品の独特のスパイスに繋がっているように感じました。
まとめ
「幽遊白書」のNetflixの実写版を見ての感想と漫画原作の面白さを端的にまとめると、以下のようになります。
「幽遊白書」のNetflix実写化に先立って、「冨樫義博展」が2022年10月28日から東京会場を皮切りに開催されています。私ももちろん開催直後に伺わせていただいたきました。またこれまで「ジョジョ展」「荒木飛呂彦展」「NARUTO展」「キングダム展」「ゴールデンカムイ展」「鬼滅の刃 吾峠呼世晴原画展」など多くの漫画に関する展示会に足を運んできました。中学時代に出会った親友と一緒に行っており、気が付けば25年以上の付き合いになりますが、これも漫画という共通の趣味のおかげです。2024年の夏に予定されている「呪術廻戦」原画展も今から楽しみです。とはいえ、このタイミングで原画展の開催が発表されるということは、それまでに終わってしまうのでしょうか、ゴールデンカムイのように展示会開催中に連載終了ということも考えられますし、色々と考えてしまう今日この頃です。
話が逸れてしまいましたが、Netflixさん、ナイスチャレンジでした!そして俳優の皆様は本当に熱演でした。特に上杉柊平さんが演じる「桑原」が個人的には一番素敵だなと感じました。色々と勝手な意見を書いてしまいましたが、是非Netflixの実写版も漫画の原作もどちらもチェックしてみて、ご意見をぶつけていただければ幸いです。
コメント